『人新世の「資本論」』(斎藤幸平)について
『人新世(ひとしんせい)の”資本論”』(斎藤幸平・著)を多くの知的刺激を受けながら読んだ、ということは以前FACEBOOKで書きました。
この本が目にとまったのは、「SDGSは大衆のアヘンである」という、衝撃的な宣伝文句があったからでした。
この本で論じられている内容には大変注目すべき点が多くあり、難しい学術的な本にもかわらず一気に読みました。それから数ヶ月が過ぎ、もう一度ゆっくり読み直してみて、いくつかの新しい発見というか、問題点をいま考えています。
斎藤幸平さんは『未来への大分岐』という本の中で、次のように言っています。
「(日本では)下からの運動によって資本に対抗して規制をかけるという経験が希薄だということです。そのせいで、資本主義と民主主義との両方が危機に直面したときに、若い世代は政治でしか世界を変えられないという発想にしがみつくことになる。議会で多数派となって新しい政策を掲げて、制度を変えるんだという発想以外出てこないのです」
ここには、議会制民主主義という人類の到達を否定するか、若しくは軽視する考えが示されていて、議会を通じての社会変革を「政治主義」だと切りすてています。
「さらに、政治主義は、民主主義の闘争領域を選挙戦へと著しく狭めてしまう」だとか、「専門家や学者による政策論は問題を抱えている当事者の主体性を剥奪する」とまで論じています。
斎藤さんは、「コモン」という語をあちこちで多用しています。「コモン」を社会運動として地域で広げてゆくことがコミュニズムの本道なんだと主張しています。
僕が感じている問題の一つは、資本主義の諸矛盾の元凶、儲け第一主義を克服する運動というか、たたかいの道すじや展望が語られない、ということ。
それから、斎藤さんがいう「政治主義」ということも、これは余りにも粗雑な議論に過ぎやしないかということです。
日本で「リベラル」と呼ばれているあれこれの勢力には、さまざまなものがあります。労働運動の中にも、もう存在意義さえなくなってしまった流れもあります。
しかし、日本共産党の決意を軸にして育ってきた野党間の共同や、市民レベルでの共闘の積み重ねやという、こうした運動の合流、発展を正しく見る目を持ってほしいと思います。21世紀のコミュニズムは、こうした共同のたたかいの道の向こうに見えてくると思うのです。
折ふしのうた
by hara-yasuhisa
S | M | T | W | T | F | S |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
28 | 29 | 30 | 31 |
最新の記事
読書は最大の快楽 |
at 2023-03-26 22:23 |
『南紀州ー荒南風のとき』余話 |
at 2023-03-25 20:45 |
読者からの感想 |
at 2022-06-29 21:20 |
苦闘と希望を描きたい |
at 2022-02-15 12:12 |
衆議院選挙雑感 |
at 2021-11-03 13:39 |
仁坂・和歌山県知事の「シング.. |
at 2021-07-14 14:22 |
『枝野ビジョン・支え合う日本.. |
at 2021-06-24 16:31 |
『人新世の「資本論」』(斎藤.. |
at 2021-05-23 00:25 |
丸本安高さんの死 |
at 2021-01-24 13:51 |
長編小説のこと |
at 2020-11-27 11:52 |
以前の記事
2023年 03月2022年 06月
2022年 02月
2021年 11月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 01月
2020年 11月
2020年 09月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 03月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 02月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 08月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月