『枝野ビジョン・支え合う日本』の私見
これをザーと読んでまず感じたことは、日本政治のいまの局面で日本共産党をどう見るかということがひとつの焦点となっている、ということだ。共産党をどう理解し、どう向き合うべきか。このことが問われる時代になっていると、『枝野ビジョン』はこのことを行間に隠しているが、なお隠し切れずにいる。
「共産党とは連立できない」論が毎日のようにマスコミを賑わしている。枝野氏がこれをどう考えているのか、『枝野ビジョン』を読む限りでは定かに分からない。この中には「野党の共闘」という表現さえ出て来ないほどに、枝野氏はなかなか難しいと考えているのかも知れない。
この問題で、共産党の態度は前々からはっきりしていて、新しい政権のもとでは、「閣内か閣外かにこだわらない」という。要は、立憲主義をとり戻し、海外で戦争する国に道をひらく安保法制をやめる、野党共闘が始まって以来の立場を貫いている。
さて、枝野氏がめざす「社会像」は、ひとことで言えば、自民党の自己責任論、新自由主義に変わって「支え合う社会」を実現すること、にある。
そして、「経済の量的な成長で国民を豊かにすることは限界に達している」、「私たちは、明治以来150年進んできた社会のあり方が今後は通用しないこと」、「これまでの延長線上で打開策を模索しても、答えは見つからない」と主張している。
つまり、20世紀に幅を利かせてきた資本主義や新自由主義そのものが行き詰まっているというのだ。だから、新しい「支え合う社会」が必要だという。
「近代化の加速で核家族化や都市化が進み、家族共同体や村落共同体という支え合う日本社会伝統の構造が崩れてきた」とか、「これからの社会に求められているのは、日本という社会の単位で互いに支え合い、分かち合うための機能」とか、提案している。
さて、総選挙での野党の候補者一本化は、政権交代をめざすうえで大きな課題となる。しかし、その点での言明がない。ただ「このビジョンで任せてくれ」とだけ言う。「連合」や国民民主などからの雑音やヤジが多いときだけに、野党共闘や政権構想でのもっとしっかりとした「ビジョン」が求められる。
立憲民主党と日本共産党の間で、日米安保や自衛隊をめぐる政策の違いは確かに大きい。だがそんなことは初めから自明のことだ。問題は、政策の違いにあるのではない。「アベ・スガ独裁政治を倒すために本気になっているのかどうか」だ。オリンピック開催の是非が問われているいま、東京都議選は『枝野ビジョン』にとって重要な試金石だ。
折ふしのうた
by hara-yasuhisa
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