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仁坂・和歌山県知事の「シングルイシュー」論


 『シングル・イシュー』というタイトルで、仁坂・和歌山県知事が『県民の友』に一文を乗せている。

 『シングルイシューポリティクス』で真っ先に思い浮かべるのは、アメリカの「黒人差別反対」の運動だが、そもそも政治的な運動とは、一つの事柄に的を絞って行われる場合がほとんどだろう。原発、地球温暖化、五輪開催などなどの反対運動は、すべて一つの事柄に反対する運動だ。

 仁坂知事は、こうした運動に敵意を露わにする。いわく、「何か一つの事柄を成就させたり、否定したりすると必ず副作用があります」という。だが、それがどうしたというのだ。原発を止めれば、原発で甘い汁を吸う勢力が「原発をなくしたら電力をどう確保するのか」などと難癖をつけるだろう。エネルギー政策を転換すればいいだけのことだ。

 また、仁坂知事は、「オリンピック反対と言ったら、それに人生をかけてきたアスリートが可愛そうではないかという気持ちはないのか」と書いている。ちょっと待ってほしい。コロナ禍で途端の苦しみを味わっている、幾百万の民の気持ちがあなたは分からないのか、と問いたい。みんな人生をかけて苦しい人生を生きているのが、分からないのか。

 過去、最大の対決点だった「シングルイシュー」は、いうまでもなく「戦争反対」だ。幾百万人の青年、国民の命が抹殺されているときに、仁坂知事の「シングルイシューは多くの問題をはらみます」などの言うのは児戯に等しいばかりでなく、政治家失格である。

 一知半解なしたり顔で「シングルイシュー」について論ずる時間があれば、コロナで明日をも知れない淵に追いやられている人々の声に「聞く耳をもつ」べきだ。




# by hara-yasuhisa | 2021-07-14 14:22

『枝野ビジョン・支え合う日本』の私見


 これをザーと読んでまず感じたことは、日本政治のいまの局面で日本共産党をどう見るかということがひとつの焦点となっている、ということだ。共産党をどう理解し、どう向き合うべきか。このことが問われる時代になっていると、『枝野ビジョン』はこのことを行間に隠しているが、なお隠し切れずにいる。


「共産党とは連立できない」論が毎日のようにマスコミを賑わしている。枝野氏がこれをどう考えているのか、『枝野ビジョン』を読む限りでは定かに分からない。この中には「野党の共闘」という表現さえ出て来ないほどに、枝野氏はなかなか難しいと考えているのかも知れない。

 この問題で、共産党の態度は前々からはっきりしていて、新しい政権のもとでは、「閣内か閣外かにこだわらない」という。要は、立憲主義をとり戻し、海外で戦争する国に道をひらく安保法制をやめる、野党共闘が始まって以来の立場を貫いている。


 

さて、枝野氏がめざす「社会像」は、ひとことで言えば、自民党の自己責任論、新自由主義に変わって「支え合う社会」を実現すること、にある。

 そして、「経済の量的な成長で国民を豊かにすることは限界に達している」、「私たちは、明治以来150年進んできた社会のあり方が今後は通用しないこと」、「これまでの延長線上で打開策を模索しても、答えは見つからない」と主張している。


 つまり、20世紀に幅を利かせてきた資本主義や新自由主義そのものが行き詰まっているというのだ。だから、新しい「支え合う社会」が必要だという。

 「近代化の加速で核家族化や都市化が進み、家族共同体や村落共同体という支え合う日本社会伝統の構造が崩れてきた」とか、「これからの社会に求められているのは、日本という社会の単位で互いに支え合い、分かち合うための機能」とか、提案している。


 さて、総選挙での野党の候補者一本化は、政権交代をめざすうえで大きな課題となる。しかし、その点での言明がない。ただ「このビジョンで任せてくれ」とだけ言う。「連合」や国民民主などからの雑音やヤジが多いときだけに、野党共闘や政権構想でのもっとしっかりとした「ビジョン」が求められる。


 立憲民主党と日本共産党の間で、日米安保や自衛隊をめぐる政策の違いは確かに大きい。だがそんなことは初めから自明のことだ。問題は、政策の違いにあるのではない。「アベ・スガ独裁政治を倒すために本気になっているのかどうか」だ。オリンピック開催の是非が問われているいま、東京都議選は『枝野ビジョン』にとって重要な試金石だ。

 

 


# by hara-yasuhisa | 2021-06-24 16:31

『人新世の「資本論」』(斎藤幸平)について


『人新世(ひとしんせい)の”資本論”』(斎藤幸平・著)を多くの知的刺激を受けながら読んだ、ということは以前FACEBOOKで書きました。

この本が目にとまったのは、「SDGSは大衆のアヘンである」という、衝撃的な宣伝文句があったからでした。

この本で論じられている内容には大変注目すべき点が多くあり、難しい学術的な本にもかわらず一気に読みました。それから数ヶ月が過ぎ、もう一度ゆっくり読み直してみて、いくつかの新しい発見というか、問題点をいま考えています。

斎藤幸平さんは『未来への大分岐』という本の中で、次のように言っています。

 「(日本では)下からの運動によって資本に対抗して規制をかけるという経験が希薄だということです。そのせいで、資本主義と民主主義との両方が危機に直面したときに、若い世代は政治でしか世界を変えられないという発想にしがみつくことになる。議会で多数派となって新しい政策を掲げて、制度を変えるんだという発想以外出てこないのです」

 ここには、議会制民主主義という人類の到達を否定するか、若しくは軽視する考えが示されていて、議会を通じての社会変革を「政治主義」だと切りすてています。

「さらに、政治主義は、民主主義の闘争領域を選挙戦へと著しく狭めてしまう」だとか、「専門家や学者による政策論は問題を抱えている当事者の主体性を剥奪する」とまで論じています。

斎藤さんは、「コモン」という語をあちこちで多用しています。「コモン」を社会運動として地域で広げてゆくことがコミュニズムの本道なんだと主張しています。

僕が感じている問題の一つは、資本主義の諸矛盾の元凶、儲け第一主義を克服する運動というか、たたかいの道すじや展望が語られない、ということ。

 それから、斎藤さんがいう「政治主義」ということも、これは余りにも粗雑な議論に過ぎやしないかということです。

日本で「リベラル」と呼ばれているあれこれの勢力には、さまざまなものがあります。労働運動の中にも、もう存在意義さえなくなってしまった流れもあります。

しかし、日本共産党の決意を軸にして育ってきた野党間の共同や、市民レベルでの共闘の積み重ねやという、こうした運動の合流、発展を正しく見る目を持ってほしいと思います。21世紀のコミュニズムは、こうした共同のたたかいの道の向こうに見えてくると思うのです。



# by hara-yasuhisa | 2021-05-23 00:25

丸本安高さんの死


 日置川の上流に市鹿野(いちかの)という集落があり、その名の成り立ちからして、古くは鹿の市が開かれるほどにぎわった土地だと想像されます。そこからさらに山道を車で30分ほど走ると市鹿野の上露(こうずい)の小集落があります。さらに車で・・・・というほど、昔は山間に小集落が散在していました。
 
 話は少し逸れますが、党の専従になり日置川町の議員選挙でオルグに入ったとき、ぼくはこの上露に上り大きな衝撃を受けたことがありました。現在は、この上露の集落には90歳を過ぎたお婆ちゃんが独りしかいませんが、その当時は住民は数十人いました。衝撃だったのは、そこに住むおっちゃんたちが毎週のようにエンゲルスの「サルが人間になるに・・」の学習会を開いていたことでした。

 「何てよう!」とは、ぼくの地方では驚いたときに発することばですが、何てようと、そのときは大声を上げてしまいました。詳しく話を聞いてみると、上露の男性たちにはシベリア抑留から戻った方が多く、向こうで受けた学習を戦後も自分たちで行っているんだと、まあそういうことでした。それにしても、よそ者はほとんど足を踏み入れない山奥の小さな集落で、山仕事に従事しているおっちゃんたちがエンゲルスを勉強している事実に驚いたものでした。

 昨日、その市鹿野で生まれ育った丸本安高・白浜町議が急死されました。ぼくよりひとつ年下で、熊野高校の後輩でもあります。議員に出るときにも様々な話を交わし励ましたものでした。山奥の議員ですから、住民の生活のすべてと関りを持ちます。水道が壊れたから直してくれと電話が入りますし、洗濯機が回らないからと電話が入りますし、タンスが重たいから移動できへんからと電話が入ります・・・。
 
 「急に上富田のスーパーに買い出しに行かなあかんねけど、だいそ連れてってくれへんかなあ」と誰かがいうと、また誰かが「そあなことは議員に頼まなあかんわ」と、丸本議員に電話が入ります。彼は、そうした住民の切実な要求にほぼすべて応えてきました。ことばの文字通りの意味で「なくてはならない」議員として活動していました。

 ぼくが国政候補者のおり幾度となく「丸やん」と行動をともにして、どれほど住民に親しまれている議員さんなのかを目の当たりにしました。腰が軽いと親しまれた「丸やん」でしたが、大変な研究家でもありました。この数年、パーキンソン病とたたかいながらの議員活動でしたが、かけがえのない議員さんを失いました。こころからその労に感謝しご冥福を祈りたいと思います。






# by hara-yasuhisa | 2021-01-24 13:51

長編小説のこと


 昨日、ぼくの小説(前編)が本になって出版された。

 文学を生涯の探求テーマにしようと胸に秘めたのは、京都で学生生活を送っていたころ。生き方を左右するようないくつかの作品に出逢ったのが、そう決意したきっかけだった。
 
 常に頭のなかにあったことは、階級闘争の実践を優先し、そのうえで文学を探求するんだということ。その後、新聞記者をやめ、地区委員会を訪ねて「専従に雇ってくれませんか」とお願いしたのは、実践を優先しようという思いからだった。

 でも、40数年という長い歳月を専従として過ごそうとは思ってもいなかった。書いてはときどきの事情で中断し、書いては中断し、その繰り返しだった。退職して、まず考えたことは、ハノイに行ってバオ・ニンという作家に会おうということだった。

 彼はぼくより一つ年下で、17歳で北ベトナム人民解放軍に入り、米軍との戦闘に参加。500人の部隊でたった10人が生き残った中部高原での戦闘。彼はそのうちの一人だ。戦争後に出版した『戦争の悲しみ』が国際的な反響を広げた。もう20年も前にこれを読んだとき、この作者にいつか会おうと心に決めた。

 ハノイの高層アパートの自宅に招かれた。ドアをあけ、一目見て、通って来た道が地獄だっただろうことを偲ばせる、そんな彼の容貌に胸が詰まった。何ヶ所もの銃弾のあとがあるというさほど大きくない体。頭の毛はすべて真っ白だった。

 東欧の古い街・キエフを訪ねたのは、ソ連時代の人々の苦労を生で知ろうと思ったからだった。片言の、中学生レベルの英語だが、たくさんの人々と話ができた。この二つの国を訪ね、人々の生活とたたかいに直にふれたことは成果だった。

 『南紀州』という長編の作品を仕上げるまで、実に長くて遠回りをしてきたなあと、いまさらのように思う。しかし、これはぼくにしてみれば、ほんの緒についた、はじまりであって、理想とする文学の探求はこれからだ。

 多くのみなさんから、「冷やかし」の感想をいただければありがたい。
 












 

 







 

# by hara-yasuhisa | 2020-11-27 11:52


折ふしのうた


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